阪神・淡路産業復興5周年記念事業

「環境創造とコミュニティー・ビジネス」


1999年2月18〜19日

甲南大学文学部 人間科学科

谷口文章研究室



「環境創造とコミュニティ・ビジネス」


 甲南大学・谷口研究室では、長年「環境」をテーマに研究している。「環境」という概念を、自然環境、社会環境、心の環境の三つからとらえ、各環境に関する研究や活動をおこなってきた。たとえば、自然環境については農薬汚染が原因と思われる「奇形ザルの調査」を、社会環境については公害問題の「水俣病」を、そして心の環境については現代の「子どもの心の荒廃」について研究をおこなっている。このような活動を通じ、私たち人間が環境や他の生命に与えてきた負荷の大きさを実感した。また、同時にすべての環境を回復する必要性も痛切に感じた。
 そこで、具体的に甲南大学の敷地の一部、甲南大学広野グラウンド・野外活動施設(神戸市西区)にビオトープ(生物生息圏)をつくり、自然環境の復元を試みている。また「環境教育」の一環として、田ごしらえ−籾まき−田植え−稲刈り−脱穀−餅つき、畑仕事などのフィールドの体験もおこなっている。さらに、牛乳パックを用いた紙の製作や草木染めも経験した。このような野外での体験学習を通じ、環境を身近なものとしてとらえる姿勢と、保全の意識が自ずから育まれると考えられる。

 今回、阪神・淡路産業復興5周年記念事業として新しい産業創出(ベンチャー・ビジネス)につながるアイデア提供を依頼された。そこで、これまでの活動を創造的復興という観点から見直し、地域の活性化と健全で快適な生活環境の創造を可能とするコミュニティ・ビジネスを考えたい。「環境創造とコミュニティ・ビジネス」と題して、地域規模の身近な取り組みとともに、それらが、広く地球規模の環境保全へと発展する可能性を探る。具体的には、家庭、学校、都市の中にビオトープを取り入れた場合のやすらぎの場としてのビオトープ・モデルを例示する。
 展示にあたり、すでに神戸市の小学校や公園におけるビオトープの取り組みの例を参考にさせていただいた。今後も、発展の可能性を継続して考えていきたい。

甲南大学文学部・谷口ゼミ一同
2000年2月18日、19日

環境創造とコミュニティ・ビジネス(パネル内容)

第1部 身近なコミュニティ・ビジネス

(1)「人」をとりまく衣食住の環境
   1)衣:ケナフ、ペットボトルから衣服へ、草木染め、織物
   2)食:エコクッキング、有機農業、炭焼き、地酒
   3)住:庭、エコロジカルライフ
   4)人:花、小さな命、やすらぎ・健康、環境家計簿

(2)環境創造とビオトープ(生物生息圏)
   1)公害問題から環境問題へ:水俣問題(社会環境の破壊)
                奇形ザル問題(自然環境の破壊)
                箱庭療法(心の環境の破壊)
   2)環境問題から環境創造へ:ビオトープの定義
                景観としてのビオトープ(環境創造)
                点から線、そして面へ(環境復元)

第2部 コミュニティ・ビジネスの提案

(1)インテリアとしてのビオトープ(家庭)
   プチ・ビオトープ:部屋の中のビオトープ

(2)住宅・屋上緑化(建物)
   自然の機能を日常へ

(3)小学校 甲南大学(造園)
   1)神戸市立向洋小学校
   2)神戸市立本庄小学校
   3)甲南大学

(4)神戸市 伊吹台谷口公園、ポートアイランド中央公園(都市計画)
   1)「ビオトープ・ランド」の発想
   2)ポートアイランド中央公園
   3)伊吹台谷口公園

第3部 ビオトープの展開

(1)ビオトープの試み(甲南大学広野グランド・野外活動施設)
   1)現在までの経緯
   2)観察記録

(2)学校ビオトープの展開
   1)ビオトープの意義
   2)総合的な学習との関わり
   3)神戸市の学校ビオトープ



ブース展示にあたり協力して頂いた機関など

財団法人 ひょうご環境創造協会 ひょうごエコプラザ
神戸市環境局 環境保全部 環境情報課 
神戸市港湾整備局 新都市整備本部 工務課
三ツ星ベルト株式会社
神戸レインボーライオンズクラブ
株式会社 アトリエフルタ建築研究所 
ヨシダ・環境デザイン研究所 
神戸市立糀台小学校
神戸市立竹の台小学校
神戸市立本庄小学校
神戸市立向洋小学校
神戸市立蓮池小学校
神戸市立鹿の子台小学校
神戸市立甲陽園小学校

ブース展示製作にあたり参考にした文献など

杉山恵一・赤尾整志 監修『学校ビオトープの展開』(新山社サイテック)
桜井善雄 監修『水辺ビオトープ』(新山社サイテック)
沼田眞 監修 『都市につくる自然』(新山社)
ため池の自然談話会 編 『身近な水辺 ため池の自然学入門』(合同出版)
ピーター・ハーパー 著 『ナチュラルガーデン ブック』(産調出版)
塩瀬治 編著『ビオトープであそぼう』(星の環会)
桜井康 著 『自然観察シリーズ27、街路樹と並木』(小学館)
瀧光夫 著 『建築と緑』(学芸出版社)
デヴィット・ピアソン 著 『ナチュラルハウス ブック』(産調出版)
リバーフロント整備センター 編 『まちと水辺に豊かな自然を』(山海堂)
リバーフロント整備センター 編 『フィールド総合図鑑 川の生物』(山海堂)
『Solar Cat ビオトープ入門』(OM研究会)
『SD、1999年1月 環境共生』(鹿島出版会)
『SD、2000年6月 風景創出の現在・ランドスケープ アーキテクトの挑戦』
『環境緑地 植生の理論技術』(鹿島出版会)
『日本野生植物図鑑』(八坂出版)
『和風デザイン図鑑』(建築知識)
オギュスタン・ベルク 著 『都市のコスモロジー』(講談社現代新書)
有吉佐和子 著 『複合汚染』(新潮社)
中橋実 著 『がんばれコータ』(長征社)
ニホンザル奇形問題研究会 編 『奇形ザル』(汐文社)
石牟礼道子 著 『苦海浄土 わが水俣病』(講談社文庫)
レイチェル・カーソン 著 『沈黙の春』(新潮社)


[RETURN]