2001年度広野環境教育実践農園 活動報告

―野菜作りの体験―

谷口研究室環境教育農作業チーム

 2000年度の活動から様々な課題がでてきたが、2001年度は、その課題をふまえて活動しました。

1)    活動経過

 昨年度までは、農園が大学本校舎から離れている(車で約1時間)ため、現地に行って作業する回数は月に1〜2回でした。しかし、今年度からは週一回の活動を行ないました。活動日を増加させたことによって、種蒔き、間引き、収穫などの適時を逃がさず行なうことができるようになりました。昨年度は、大根、カブは植える時期が遅すぎたということと、適時に間引きをしなかったことで失敗しましたが、今年度はその反省を活かし、植える時期を農家の人にうかがうことにしました。それによると、「いわし雲」が出てくる頃が丁度いいということです。年間で種蒔、収穫などの時期は大体決まっていますが、年ごとに気象の変動で時期がづれるので、雲を見ながら作物の植え時期を知るということでした。こうした農家の方の考え方は、単なる知識ではなく知恵であると感じました。また、キュウリは驚くほど生長が早く、一晩で何センチも伸びるため、長い期間放っておくと黄色に熟れて大きくなりすぎます。熟すと黄色になるのは、「黄ウリ」の名前の由来だそうですが、あまり大きくなりすぎると普通のキュウリとしては食べることができなくなります。キュウリに限らず、夏野菜は生長が早いので頻繁に収穫しなければなりませんでした。

2)    栽培品目について

 昨年度は、14品目の作物を栽培していましたが、今年度栽培した品目は、サツマイモ、シロイモ、ダイズ、ピーマン、ナス、トマト、ミニトマト、スイカ、キュウリ、タマネギ、スナックエンドウ、ハクサイ、キャベツ、ホウレンソウ、カブ、ダイコン、ネギ、カボチャ、ヒマワリ、ジャガイモ、レタス、スイカ、オクラ、ラッカセイ、モロヘイヤ、イチゴ、ニンジン、シュンギク、コメの30品目に増やしました。少量他品目を育てることによって、より現実的な生活に近づくことができ、持続可能なライフスタイルのモデルとなるのではないでしょうか。

3)    畑から食卓までを考えた野菜作り

 植える時点で収穫がどれぐらいになるのかを予想し、作物の調理方法を前もって考えました。植える時点で食べ合わせも考慮に入れるようにしました。これは、収穫祭におけるエコクッキングで役に立ちました。収穫祭では、大根菜のふりかけ、豚汁、ふろふき大根、焼き芋、サツマイモコロッケ、芋ご飯、ミネストローネ、雑煮、ポトフ(白菜、ニンジン、カブ)、大学芋、スイートポテト、芋羊羹などをつくりました。調理後すぐに食べるだけでなく、保存食の作り方についても調べ実践しました。野菜の浅漬け、ダイコン、カブの皮の甘酢漬けをダイコン、カブ、白菜などで作りました。
 調理しきれないものは、貯蔵しました。大量に採れた芋は、収穫してから貯蔵し、2月ごろに食べると甘くて美味しいので、サツマイモの貯蔵を試みました。私達が行った貯蔵方法は以下のとおりです。

(サツマイモの貯蔵方法)

(貯蔵場所)

@      深さ120cm、幅60cmの穴を掘る。
A      株ごといれ上に藁を敷く。
B      竹か丸太を水平に並べる。
C      さらに藁をかぶせて籾殻をかける。
D      その上に土をかぶせる。

※      貯蔵温度は13度が最適。10度以下になると品質が低下する。

 この方法で2001年の12月に貯蔵を試みましたが、翌年2月に取り出してみると、カビが生えたり腐ったりしていました。失敗の要因としては、貯蔵場所にあると考えられます。貯蔵場所を畑の真ん中に作ったため、雨をしのぐことができず、水が入ったのだと思います。この試みから芋の貯蔵には、乾燥させ湿気が入らないことが大切だということがわかりました。今後、この失敗を生かしていきたいと考えています。

4)    「食」から「衣」や「住」にまで活動を広げる

 以前にも「食」だけでなく、自然をとりいれてクラフト活動を行ってきましたが、今年度から綿作りも行なうことにしました。綿を作って、活動を「衣」に広げていこうと考えたからです。河内綿とアメリカ綿を栽培しました。いずれも、大阪の富田林市にある錦織公園から種をわけていただきました。これらの種は、交配種でないため毎年使え循環できる利点があります。循環は、有機農業の基本ではありますが、循環できる種は、手に入れるのが困難です。綿の種を分けていただいたことは、私たちにとって幸運なことでした。綿の栽培には砂地がよいとされていますが、私達の農園の土壌は粘土質です。それでも、秋になると実をつけ1月下旬まで収穫をすることができました。
 河内綿とアメリカ綿は、性質が違うため用途にあった使い方ができます。たとえ少量あっても、布ができる過程を知ることで昔の人々の技術を身につけるとともに、工夫する思考が働くようになるのではないかと考えています。現在は、種を手作業でとり、綿打ちをし、紡錘車で糸を紡ぐ試みをしてます。最終的には本の“しおり”や“コースター”を作ろうと思います。

5)    里山活動の第一歩 ―雑木林の手入れ―

 甲南大学環境教育実践施設(広野)の里山活動のために、雑木林の手入れを今年の目標の一つに盛り込んでいました。活動としては、雑木林の中にネイチュアトレイルを作りました。自然のまま観察するほうが良いように思われがちですが、ここの雑木林は、60年間放置されていたため、木がくさって倒れかけていたり、松枯病になっている松があったりするので取り除く必要があります。雑木林の中に適度に太陽の光が入ることによって多様な生物が生息する場所になるので、多少木を切ることも雑木林を維持するためには必要です。また農園で使えるように、雑木林の中の枯れ葉を集めて培養土を作りました。この培養土は、来年度の苗床に利用することができます。また、竹林にある竹を切って、野菜の支柱にしました。その他、箸やクラフトにも利用し、自然の中にあるもので農業をやりくりする工夫をしました。
 2001年度の活動をとおして学んだことは、自然にあるものをうまく利用して使う工夫でした。物事を多面的にとらえ、自然のものを生かし、自然にしたがって農業をおこなう思考方法は、私たちのライフスタイルを変革する考え方や知恵となって身についていくと思われます。この活動を通じて単に農作業をするのではなく、活動を通じて自然との共生のための思考方法を習得することが出来たことは、この活動の大きな成果でした。