1999年度広野環境教育実践農園 活動報告

 谷口研究室環境教育農作業チーム

 わたしたち谷口研究室では、「環境倫理と環境教育」を研究活動のテーマとしている。これまでローカルな環境汚染とグローバルな環境汚染の問題を追及し、それぞれの解決方法について考えてきた。まず、身近な環境問題を認識し、そこから、環境復元と創造について考えている。さらに、地球規模の環境教育の理論を模索してきた。ローカルな解決方法の実践として、甲南大学広野野外施設(神戸市西区)でフィールドワークを行っている。環境問題解決への第一歩として行ってきた甲南大学広野グランド野外実践施設における有機農業の取り組みの報告をする。
 1999年度は、野菜作り、米作りをおこなった。この活動の目的は、体を動かすことによる自然との一体感、収穫の喜び、食べ物の大切さを身をもって体験することにある。また、このような体験をすることが環境問題の解決方法の一つになるものと考えられる。

〈野菜作り〉

 野菜作りでまず大切なことは、土作りである。土を耕し、堆肥をまき、畝を作る。それから、種をまいたり、苗を植えたりする。有機農法は、今最も注目されている方法の一つであり、農薬や化学肥料を使わない環境に優しいものである。栽培した野菜は、きゅうり・なすび・ピーマン・ししとう・ハーブなどである。普段は、売っている野菜を買っているため、野菜を作ることが大変だとは思わない。だが、自分たちで野菜を作ってから、無駄にしないでいかに料理を作るかを考えるようになった。エコ・クッキングを心がけるようになったのである。

〈米作り〉

 研究室では、休耕田を借り、もち米作りを行った。広野グランドの管理人、藤原さんの指導のもとに籾まき、田ごしらえ、田植え、稲刈り、脱穀を体験した。お米という日本にとってなくてはならない食べ物が、時間と労力をかけて作られているとは、あまりにも身近すぎてなかなか感じないだろう。また、稲穂がたわわに実ったときの感動は、とても大きなものであった。

〈収穫祭〉

 12月18日には畑に実った野菜や、自分たちで刈ったもち米を使った収穫祭を開いた。みんなで餅つきをし、つきたての餅を食べたのであった。餅つきをしたことのない人が多かったため右往左往したが、何とかできあがった。一から自分たちで作り上げた餅は絶品であった。また、すべてが無農薬で作られているので、安心して口にすることができるのである。あのお餅の味は、一生忘れられないものになるに違いない。
 自分たちで農作業をすることは、現代の若者にとって、なかなか経験することのできないことである。農作業を経験することは、食べ物を大切にする心だけでなく、自分たちが食べている食べ物についても考えるきっかけとなるだろう。今、食べ物の安全性が問われてきている。残留農薬や環境ホルモンなど、さまざまなことが懸念されており、私たちにとって無視できない問題となってきている。私たちの体がいろいろなものに蝕まれてしまうことは、同時に次の未来を担う世代にも影響を与えてしまうのである。安全な食べ物を無駄なく、おいしく調理し、食べることが体の健康だけでなく、心の健康にもつながるのではないだろうか。
 このように、農作業を行うことは、食べ物の大切さや安全性について考えるきっかけをあたえてくれる。また、自然の中で体を動かすことにより、心身のリズムを自然のリズムと一体化することができる。そのため心と体がリラックスし、心の環境問題に対しても解決方法の一つとなるのではないだろうか。