“生命-環境”学の確立をめざす |
21世紀は「環境の時代」といわれます。地球環境をめぐる問題の深刻さが日々クローズアップされていますが、環境問題を考える場合には、環境が生み出している「生命(いのち)」の問題も同時に捉えておく必要があります。したがって、21世紀は「環境と生命(いのち)の時代」であるといえます。つまり、一人ひとりが環境の健全さと生命の健康について考えなければならない時代に直面しているのです。 今日、環境保全や地球温暖化防止などに関する政策や研究などが推進されつつありますが、環境問題を解決する場合、環境科学の側面からだけでなく、環境を破壊・汚染してきた人間がどのような心構えで、社会的に行動するのかを明らかにする人文科学や社会科学も総合した環境学が必要となっています。その意味で、地球環境問題の本質的な研究・教育が求められています。 20世紀後半から人間の存在と地球環境の存続が問題とされていますが、高度経済成長を経て、日本の経済は停滞期に入っており、「活力ある安定経済」が求められる一方で、先進国は飽食の時代を迎え、生きる意欲や人生観の喪失(ニートやフリーターの増加など)、そして精神病理の問題(暴力や重大犯罪等)などが生じているのも現状です。現代の社会が抱える問題として社会・経済構造の基盤を揺るがす状況とともに、「21世紀の地球環境の人間存在」の持続可能な未来も危ぶまれているといえます。 こうしたことから、人間と自然、生命と環境との関係を今一度、総合的・統合的な視座から環境学として理論構築し、かつ主体的に責任ある行動ができる人材を育成することが急務になっています。 |
サステイナビリティ(持続可能性)×生命(いのち)の輝き |
本研究室では、持続可能な未来づくりに向けた研究・教育のフィールドとして、以下を基本理念とした活動を展開しています。 環境の健全さ,生命の健康を基盤にした応用哲学・応用倫理学(環境倫理学・生命倫理学)の展開 自然環境・社会環境・精神(心の)環境における「環境人間学」「環境教育学」の理論・実践の確立 アジア・太平洋地域をベースにした環境教育情報ネットワークの確立 ローカル(地域)をベースにしたライフスタイルの変革 |
演習I・II・III(人間表現領域) |
テーマ:環境と健康のケアの倫理 理論的な西洋哲学,環境教育の実践を通じた環境倫理,そして人間の心理と生命倫理などをとおして,いかに心の環境を整えていくかを学びます。その具体的な応用として,フィールドワークの体験もとりいれています。フィールドワークでは,小・中・高校生の環境教育の実施サポートや,幅広い年代と強調しながら環境教育の原体験をします。このような体験学習は,ストレスの多い現代生活から離れて,自然のリズムを体感し,自分自身をみつめなおすきっかけになります。 講義の形式は「環境と健康のケアの倫理」などの文献を精読し,発表形式で行ないます。その過程で,専門書を精読する力,プレゼンテーションする力,質問する力をつけていくことをねらいとしています。一年に数回フィールド調査や体験実習,ゼミ合宿を行なう。また年一度海外研修旅行(中国・タイ・マレーシア・カナダのいずれか)を行なう予定です。 ゼミ活動の一環として2001年度から継続して, 「甲南大学における循環型コミュニティの創造」をテーマに, 活動を展開しています。学内においては, ゴミの4分別化の実施(2001年), 摂津祭(学園祭)におけるリサイクル活動の普及・推進, 環境啓発シンポジウムの開催などを学生が主体となって実施してきています。さらに, 学外での活動内容としては, 甲南大学環境教育野外施設(広野)での自給自足生活の体験学習や野菜・米作り, 国外での活動として, タイ・プラナコーン=ラジャバト大学環境教育センター, 中国・北京大学環境学院, カナダ・ヴィクトリア大学環境学部, マレーシア・マラヤ大学などの大学生・大学院生との学生交流・学生会議などを行なっています。 |
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ゼミの講義風景 |
甲南小学校の子どもに苗付の指導をするゼミ生 |
主な卒業論文テーマ |
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大学院:人文科学研究科・人間科学専攻(環境・芸術・思想分野) |
人文科学研究科人間科学専攻(環境分野)では、応用哲学(環境倫理・生命倫理)、環境学、環境教育学を専門的に取り組みます。現代思想の大きな領域を占める「環境思想」について考察します。そのために,環境学と環境教育学の原理論について研究し、地球環境問題を環境学の総合的視点から検討します。
また,地球環境問題の解決のための予防的な取り組みとして環境教育学について、研究します。内面的に心豊かな人材を育てるとともに、外面的に循環型社会を実現する実行力のある人材を育てることを目的としています。そこで「環境教育学」は、心の環境を健全なものにする理論的枠組みを与えるとともに、実践的な問題解決能力を培う臨床教育の哲学という観点から研究します。
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主な修士論文テーマ |
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ゼミナール研修合宿/海外研修旅行 |
毎年、大学の夏期及び春期休暇に研修合宿や研修旅行を実施しています。地球環境問題や環境教育の現況を講義の中だけで学ぶのではなく、実際に現地を訪れることによって、その理解を深めています。これまでに、公害の原点となった水俣病調査のため熊本県水俣市を訪問、奇形ザル問題の調査で淡路島、小豆島、愛知県犬山市(日本モンキーセンター)などで調査合宿を行なってきました。 近年は、国際的な環境問題の現況を学ぶため、中国・カナダ・タイ・マレーシアを訪問し、北京大学(中国)、ヴィクトリア大学(カナダ)、プラナコーン=ラジャバト大学(タイ)、マラヤ大学(マレーシア)の環境学部や環境教育関連研究所・センターとの交流を通じて、学術研究交流を行なっています。 |
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夏期ゼミ合宿(1992年8月):熊本県水俣市を調査 乙女塚、熊本大学、水俣病センター想思社等を訪問 |
夏期研修旅行(1997年8月):北京大学キャンパスにて 環境教育研究室教授 田徳祥先生・学生とともに |
夏期研修旅行(1999年8月);日中環境教育情報交流 第一回シンポジウム(於北京大学)後、内モンゴルへエ コツアー |
夏期研修旅行(2003年7月):カナダ・ヴィクトリア大学 環境学部フィールドコース「民族生態学と環境哲学」 (担当:N. TURNER教授/谷口文章教授) |
春期研修旅行(2005年3月):マングローブ林のネイ チャートレイルへのエコツアー(タイ) |
夏期研修旅行(2006年8月):第5回国際保健医療行動 科学会議(於:プラナコーン=ラジャバト大学)終了後、 クイブリ自然公園へエコツアー.野性の象の調査 |
研究室活動 報告書 |
研究室活動・ゼミナール活動の実施内容を、毎年『研究室活動報告書』に纏め、編集しています。 研究室活動報告書 バックナンバー |
フィールド活動(環境教育野外施設[広野グランド]) |
生命・健康の観点から食品や食糧をめぐる問題について考えるとともに、生命と深く関わる環境の観点から、持続可能な社会の構築を目指した学びを展開しています。甲南大学環境教育野外施設にて、生命と自然とのふれあいを大切にした有機農業による米づくり・野菜づくりを行ないます。またその際には、中間技術をベースにした伝統的な農法を見直すとともに、生命と環境との結びつきをより深く実体験する学びを大切にしています。環境教育の実習授業や研修会や催しなども並行して行なっています。 |
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広域副専攻科目・環境学コース「環境教育の実践T・ U」の講義で田植えの指導にあたるゼミ生 |
兵庫県教育委員会主催「10年教育者経験者研修」体 験参加型ワークショップ |
学協会における研究活動・国際学術交流 |
日本環境教育学会、日本環境教育学会関西支部、日本保健医療行動科学会、日本保健医療行動科学会近畿支部 等の学会活動を行なっています。国際会議・研究大会・支部大会の開催・参加、ワークショップ・研修会などの実施、研究発表・展示発表 等を行ないます。また、研究室が運営する「地球環境と世界市民」国際協会、日中環境教育情報交流協会の活動を通して、国際的な学術研究交流も推進しています。近年は、e-Learning (TV会議システム)による遠隔授業を積極的に推進しています。 |
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北京大学創立100周年記念国際会議「環境科学と持 続的発展」(1998年)記念講演に招聘.同年、北京大 学客員教授に就任 |
第11回環日本海環境協力会議(2002年,於:中国・海 南島,主催:環境省) 講演 |
第5回国際保健医療行動科学会議「健康と環境をめぐ る教育」(2006年,於:タイ・プラナコーン=ラジャバト大 学)基調講演 |
TV会議システムを使用したe-Learning の実施(於:タイ・ プラナコーン=ラジャバト大学) |
その他の活動記録 |